裁判所事務官と書記官・裁判官の違い|事務官から書記官になるには

裁判所事務官と書記官・裁判官の違いを解説する記事のアイキャッチ

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『裁判所事務官と書記官って、名前は似ているけど何が違うの?』『事務官から書記官になれるって本当?』と気になっている方も多いですよね。法廷を傍聴しても、誰がどの職種なのかは見分けにくいものです。

結論から言うと、書記官は法律で決められた固有の権限を持つ職種で、事務官はその書記官を補助する立場です。そして、事務官として経験を積むと書記官を目指す道が開けています。

この記事を読めば、裁判所事務官・書記官・裁判官の3つの職種の違いと、事務官から書記官になるまでの流れがイメージできます。

目次

裁判所事務官・書記官・裁判官は何が違う?

先に結論

裁判官は事件を審理して裁判をする人、書記官は法廷に立ち会い調書を作るなど法律で決められた権限を持つ人、事務官は書記官のもとで裁判事務を担当したり事務局で運営の事務をしたりする人です。

裁判所の裁判部には、裁判官が事件を審理・裁判し、その裁判を支える職種として裁判所事務官・裁判所書記官・家庭裁判所調査官が置かれています。

まずは、事務官・書記官・裁判官の3つの職種を並べてみましょう。

比べる点裁判所事務官裁判所書記官裁判官
ひと言でいうと書類と法廷まわりと人の案内を支える人法律で決められた権限で裁判の手続を担う人事件を審理し、裁判をする人
主な仕事書記官のもとでの裁判事務、事務局での司法行政事務法廷立会い、調書の作成、証明、執行文の付与など事件の審理・裁判
なり方裁判所の採用試験(総合職・一般職)に合格事務官として一定期間在職し、養成課程の入所試験に合格して研修を受ける司法試験に合格し、司法修習を経るのが一般的
働く場所裁判部か事務局裁判部裁判部

『書記官は事務官の上の立場なの?』と思った方もいるかもしれません。

上か下かというより、事務官として働いた先に書記官という職種がある、と考えると分かりやすいです。裁判所事務官から書記官を目指す人は、まず事務官として採用されるところから始まります。

書記官がいないと法廷は開けない

書記官のいちばんの特徴は、裁判所法第60条で定められた固有の権限を持っていることです。

書記官が立ち会わなければ、法廷を開くことはできません。それだけ、裁判の手続にとって欠かせない職種なんです。

事務官は「書記官を補助する」立場

事務官は、書記官のもとで各種の裁判事務を担当します。公式サイトの職員紹介では、書記官の仕事を補助する事務として「訴訟関係書類の授受や法廷の準備、来庁者の対応など」が紹介されています。

裁判部ではなく、事務局(総務課・人事課・会計課など)に配置されることもあります。この点は、裁判部で働く書記官との大きな違いです。

法廷の1日で見る、3つの職種の動き

ここが大事なところです

同じ1件の期日でも、事務官・書記官・裁判官はそれぞれ違う役割で動いています。期日の前・当日・後の3つの場面に分けると、役割の違いがはっきり見えてきます。

ここでは、ある事件の期日が開かれる1日を例に、3つの職種の動きを並べてみます。手続の細かい中身は事件によって違うので、役割の違いをつかむための大まかな流れとして読んでみてください。

場面裁判所事務官裁判所書記官裁判官
期日の前届いた書類を受け取り、法廷の準備を進める法令や判例を調べ、弁護士・検察官・当事者などと打ち合わせて進行を整える審理・裁判に向けて準備する
期日の当日来庁者を案内し、法廷まわりを整える法廷に立ち会う事件を審理する
期日の後新しく届く書類を受け渡し、次の準備に入る調書を作る裁判をする
法廷の1日を期日の前・当日・後に分けて事務官・書記官・裁判官の動きを並べた図解

期日の前:準備の中心は書記官、それを支える事務官

期日の前は、書記官が法令や判例を調べたり、弁護士・検察官・当事者などと打ち合わせたりして、裁判がスムーズに進むように整えます。

事務官は、その書記官のもとで書類の受け渡しや法廷の準備を進めます。公式サイトの職員紹介では、裁判員裁判の事件は準備が多く、部の中での連携が大切だとも紹介されています。

例えば、部の中ではこんな声かけがあるはずです。

「明日の期日の書類、そろっていますか?」
「はい、届いた分はまとめてあります。追加の分が届いたらすぐお渡ししますね」

期日の当日:法廷に立ち会うのは書記官

当日、法廷に立ち会うのは書記官です。法廷では、裁判官が審理を進め、書記官がその場に立ち会います。

事務官は、法廷の外でも大切な役割を担っています。裁判所に来た人を案内したり、法廷まわりの準備を整えたりすることです。

『法廷の中にいないなら、事務官は裏方なの?』と思うかもしれません。

確かに目立つ役割ではありません。ただ、来庁した人が迷わず法廷にたどり着けるのも、書類が正しく届いているのも、事務官の仕事があってこそなんです。

期日の後:調書を作る書記官、次に備える事務官

期日が終わると、書記官は調書を作ります。訴訟上の事項に関する証明や、執行文の付与、支払督促の発付なども、書記官の権限で行われる仕事です。

事務官は、新しく届く書類を受け渡しながら、次の期日に向けた準備に入ります。こうして、3つの職種がそれぞれの役割で1件の事件を前に進めていきます。

裁判所書記官とはどんな職種?

先に結論

裁判所書記官は、法律の専門家として裁判所法第60条に定められた固有の権限を持つ職種です。法廷への立会いや調書の作成のほか、法令・判例の調査や関係者との打ち合わせで、裁判の円滑な進行を確保します。

ここで、書記官の仕事をもう少し詳しく見てみましょう。公式のQ&Aで紹介されている書記官の仕事は、次のとおりです。

書記官の主な仕事
  • 法廷に立ち会う
  • 調書を作る
  • 訴訟上の事項に関する証明をする
  • 執行文を付与する
  • 支払督促を発付する
  • 法令や判例を調べる
  • 弁護士・検察官・当事者などと打ち合わせて、裁判の進行を整える

こうして並べると、書記官は「法律の知識を使って手続を動かす人」だと分かりますよね。

一方の事務官は、書記官のもとで書類の授受や法廷の準備などを担当します。仕事の中身は、裁判所事務官の仕事内容で事件の流れに沿って紹介しています。

事務官と書記官の違いをまとめると

裁判所事務官
  • 裁判部では書記官のもとで裁判事務を担当
  • 事務局で広報・研修・設備管理などの仕事をすることもある
  • 裁判所の採用試験に合格してなる
裁判所書記官
  • 法律で決められた固有の権限を持つ
  • 法廷に立ち会い、調書を作る
  • 事務官として経験を積み、研修を受けてなる

裁判所事務官から書記官になるには

先に結論

裁判所事務官として一定期間在職すると、裁判所職員総合研修所の「裁判所書記官養成課程」の入所試験を受けられます。合格して所定の期間の研修を受けると、裁判所書記官になります。

『書記官になりたいなら、最初から書記官の試験を受ければいいのでは?』と思う方もいますよね。

公式のQ&Aでは、書記官になる道として、まず事務官として働き、そのうえで養成課程の入所試験を受ける流れが紹介されています。つまり、書記官を目指す人も、まずは裁判所事務官の採用試験からスタートするんです。

裁判所事務官から書記官になるまで
  1. 裁判所事務官の採用試験(総合職か一般職)に合格する
  2. 裁判所事務官として採用される
  3. 事務官として一定期間働く
  4. 裁判所書記官養成課程の入所試験に合格する
  5. 裁判所職員総合研修所で所定の期間の研修を受ける
  6. 裁判所書記官として働く
裁判所事務官から書記官になるまでの流れを示した図解

総合職で採用されると入所試験の一部が免除される

総合職で採用された人は、採用初年度に限り、入所試験の筆記試験が原則として免除されます。

採用された試験採用初年度の入所試験(筆記試験)
総合職(院卒者区分)全部免除(原則)
総合職(大卒程度区分)一部免除(原則)

総合職と一般職の違いは、裁判所事務官の総合職とはで詳しく紹介しています。

書記官を目指すなら、総合職と一般職どちらで受ける?

『書記官になりたいなら、総合職を受けたほうがいいの?』と迷う方も多いはずです。どちらの区分で採用されても、事務官として一定期間働けば入所試験を受けられます。

比べる点総合職一般職
入所試験を受けられるか受けられる受けられる
採用初年度の筆記試験の免除原則として免除(院卒者区分は全部、大卒程度区分は一部)公式の案内では特に書かれていない
重視する能力政策の企画立案に係る高い能力的確な事務処理に係る能力
令和8年度の倍率(大卒程度区分)46.4倍4.5倍(全国合計)

ここでいう倍率は、第1次試験の有効受験者数を最終合格者数で割った数です。

総合職は免除がある一方で、採用人数がとても少ない区分です。総合職の申込み時に特例を希望すれば、一般職(大卒程度区分)としても合否判定を受けられるので、両方の道を残して挑戦する方法もあります。一般職の試験は裁判所事務官の一般職とはで紹介しています。

事務官時代の経験が書記官の仕事に生きる

裁判部で働く事務官は、書記官の仕事を間近で見ながら、書類の扱いや法廷の準備を覚えていきます。

書記官になってからも、事件の書類を正確に扱う力や、来庁者や関係者とのやりとりの経験はそのまま役に立ちます。事務官の時期は、書記官になるための準備期間でもあるんですね。

入所試験と研修の詳細は公式で

入所試験を受けられるまでの在職期間や、研修の期間・内容は、この記事では扱っていません。目指す時期が近づいたら、裁判所の公式の案内で確かめてみてください。

事務官のうちに意識しておきたいこと

書記官を目指すなら、事務官の時期の過ごし方も大切です。書記官の仕事を補助する立場だからこそ、学べることがたくさんあります。

書記官を目指す事務官が意識したいこと
  • 書記官がどんな場面で法令や判例を調べているかを見ておく
  • 書類の扱いで迷った点は、その場で確かめて覚える
  • 法廷の準備の段取りを、自分でも組み立てられるようにする
  • 来庁者や関係者とのやりとりで、分かりやすい伝え方を身につける

事務局に配置された時期も、無駄にはなりません。裁判所全体の動きを知っておくと、書記官になってから関係部署とのやりとりがしやすくなります。

裁判官になる道は事務官とどう違う?

先に結論

裁判官になるには、司法試験に合格して司法修習を経るのが一般的な道です。裁判所事務官の採用試験とは、まったく別の試験になります。

裁判所事務官と裁判官は、同じ裁判所で働いていても、なるための道がまったく違います。

裁判官になるには、司法試験に合格し、司法研修所が担当する司法修習を経るのが一般的です。事務官の採用試験に合格しても、裁判官になれるわけではありません。

比べる点裁判所事務官裁判官
入口となる試験裁判所の採用試験(総合職・一般職)司法試験
試験の後採用候補者名簿から採用司法修習を経るのが一般的
仕事裁判部や事務局での事務事件の審理・裁判

ただ、事務官試験の専門科目の憲法・民法・刑法などは、司法試験の科目と重なる分野があります。両方を考えている人は、裁判所事務官と司法試験の記事も参考にしてみてください。

よくある思い込み

「事務官から書記官になれるなら、その先で裁判官にもなれるのでは」と考える方がいます。裁判官になるには司法試験に合格し、司法修習を経るのが一般的な道で、事務官や書記官の経験だけで裁判官になるしくみは公式の案内には書かれていません。

家庭裁判所調査官という職種もある

裁判部には、事務官・書記官のほかに家庭裁判所調査官も置かれています。家庭裁判所調査官になるには、家庭裁判所調査官補の採用試験を受けます。

令和8年度の受験案内では、裁判所事務官の採用試験(総合職・一般職の大卒程度区分)は家庭裁判所調査官補と併願できないとされています。

どの職種を目指すか考えるための目安

3つの職種のどれを目指すかは、どんな形で裁判に関わりたいかで考えると選びやすくなります。

こんな気持ちが強いなら目指す職種の目安最初の一歩
書類や案内で裁判を支えたい裁判所事務官裁判所の採用試験
法律の知識を使って手続を動かしたい裁判所書記官裁判所の採用試験に合格し、事務官として働く
自分で事件を審理し、判断したい裁判官司法試験

事務官と書記官は、同じ採用試験から始まる1本の道の上にあります。『まずは事務官として働きながら考えたい』という選び方も、十分ありなんです。

裁判所事務官と書記官についてよくある相談

この章でやること

事務官と書記官の違いについて、よく寄せられる相談を3つ選んで答えていきます。

相談1:事務官と書記官の違いと、大学1年生からやっておくことを教えてください

事務官と書記官の違いを知りたい、そしてどちらかに就くために大学1年生のうちから何をすればいいか、という相談です。

違いは、書記官が法律で決められた固有の権限を持つのに対し、事務官はその書記官を補助したり事務局で働いたりする点です。そして、書記官になるには、まず事務官として採用される必要があります。

つまり、大学生のうちに目指すのは「裁判所事務官の採用試験」です。大卒程度区分は、令和8年度の受験案内では基礎能力試験・専門試験(憲法・民法が必須)・論文試験・人物試験で選ばれます。

『法学部じゃないけど大丈夫?』と心配な方も安心してください。公式のQ&Aでは、細かな専門知識より基本的な知識や理解を重視すると書かれています。まずは憲法と民法の基本から少しずつ触れておくのがおすすめです。

初任給は、令和8年4月1日現在・東京都特別区内勤務の例で、一般職(大卒程度区分)が278,400円、総合職(大卒程度区分)が290,400円です。書記官を目指す人も、まずはこの事務官の初任給からスタートします。

相談2:面接で「傍聴で事務官や書記官はどう動いていたか」と聞かれたら?

人物試験で、裁判を傍聴した時の事務官や書記官の動きを聞かれたらどう答えればいいか、という相談です。

結論から言うと、見たことをそのまま、役割と結びつけて話せれば大丈夫です。例えば、書記官は法廷に立ち会っていたこと、法廷の外では来庁者の案内がされていたことなどです。

答え方の例は、こんな形です。

「法廷では書記官の方が立ち会っていて、手続が書記官の存在で成り立っていると感じました。法廷の外での案内や準備が、その手続を支えているのだと思いました」

公式のQ&Aでは、人物試験は専門知識を問うものではないとされています。正確な知識を並べるより、自分が何を感じたかを伝えることを意識してみてください。

相談3:裁判をしている間、事務官や書記官は何をしているのですか?

法廷で裁判が開かれている間、書記官は記録をとるイメージがあるけれど、ほかに何をしているのか知りたい、という相談です。

法廷に立ち会うのは書記官で、調書を作るのも書記官の権限です。書記官は、期日の前に法令や判例を調べたり、関係者と打ち合わせたりして、裁判の進行を整える役割も担っています。

事務官は、法廷の準備や来庁者の対応、書類の受け渡しなどで書記官を補助します。法廷の中だけでなく、その外でも裁判を支えているんです。

裁判所事務官ガイド

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よくある質問

裁判所事務官と裁判所書記官の違いは何ですか?

書記官は裁判所法第60条に定められた固有の権限を持ち、法廷への立会いや調書の作成などを行います。事務官はその書記官を補助したり、事務局で司法行政事務を担当したりします。

裁判所事務官から書記官になれますか?

なれます。事務官として一定期間在職した後、裁判所書記官養成課程の入所試験に合格し、研修を受けると書記官になれます。

いきなり書記官として採用される試験はありますか?

公式のQ&Aで紹介されているのは、事務官として一定期間働いた後に養成課程の入所試験を受ける道です。まずは裁判所事務官の採用試験を目指しましょう。

裁判所事務官から裁判官になれますか?

裁判官になるには、司法試験に合格し、司法修習を経るのが一般的な道です。裁判所事務官の採用試験とは別の試験になります。

総合職で採用されると書記官になりやすいですか?

総合職で採用された人は、採用初年度に限り、入所試験の筆記試験が原則として免除(院卒者区分は全部、大卒程度区分は一部)されます。

まとめ

この記事の要点
  • 裁判官は審理・裁判、書記官は固有の権限で手続を担い、事務官はそれを支える
  • 書記官が立ち会わないと法廷は開けない
  • 法廷の1日で見ると、事務官は準備と案内、書記官は立会いと調書を担当
  • 裁判所事務官から書記官になるには、養成課程の入所試験に合格して研修を受ける
  • 裁判官になるには司法試験と司法修習を経るのが一般的

書記官を目指す人も、最初の一歩は裁判所事務官の採用試験です。まずは事務官の仕事と試験から知っていきましょう。

裁判所事務官ガイド

裁判所事務官ガイド 編集部

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