裁判所事務官の一般職とは?仕事内容と試験の特徴をやさしく解説

裁判所事務官の一般職を解説する記事のアイキャッチ

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『裁判所事務官の一般職って、総合職と何が違うの?』『高卒でも受けられるの?』と迷っている方も多いですよね。区分や科目の名前が多くて、最初はとっつきにくい試験です。

結論から言うと、裁判所事務官の一般職は「的確な事務処理に係る能力」を重視する区分で、大卒程度区分と高卒者区分の2つがあります。

この記事を読めば、一般職の仕事内容と、2つの区分のどちらが自分に合うかが分かり、受けるまでの準備のイメージがつかめます。

目次

裁判所事務官の一般職とは?

先に結論

裁判所事務官の採用試験には「総合職」と「一般職」があります。一般職は的確な事務処理に係る能力を重視する試験で、令和8年度は大卒程度区分と高卒者区分の2つが行われています。

裁判所事務官の採用試験は、人事院の国家公務員試験とは別に、裁判所が独自に行っています。その中で、一般職はいちばん多くの人が受ける試験です。

まずは、総合職と一般職の大まかな違いを見ておきましょう。

総合職試験一般職試験
区分院卒者区分・大卒程度区分大卒程度区分・高卒者区分
重視する能力政策の企画立案に係る高い能力的確な事務処理に係る能力
勤務地の傾向所属高裁の所在地での勤務が中心希望勤務地を管轄する高裁の区域内
試験の段階第3次試験まで第2次試験まで

『一般職だと出世できないのでは?』と気にする方もいますよね。

公式のQ&Aでは、採用試験の種類にかかわらず、能力と勤務成績次第で昇進の道が大きく開かれていると書かれています。総合職について詳しく知りたい方は裁判所事務官の総合職とはをどうぞ。

一般職は「国家一般職」とは別の試験

名前が似ているので、人事院の「国家公務員一般職試験」と混同されやすいところです。

裁判所事務官の一般職は、裁判所が独自に行う試験です。採用されると国家公務員の特別職になり、給与は試験の種類に応じて人事院の試験で採用された人と同様とされています。

2つの試験の違いや併願の考え方は、国家一般職と裁判所事務官の違いで詳しく紹介しています。

裁判所事務官の一般職の仕事内容は?

先に結論

一般職で採用された事務官も、各裁判所の「裁判部」か「事務局」に配置されます。裁判部では書記官のもとで裁判事務を、事務局では総務課・人事課・会計課などで司法行政事務全般を担当します。

裁判所事務官の一般職の仕事内容は、大卒程度区分でも高卒者区分でも、基本は同じです。配置先によって、毎日の仕事が変わります。

配置先主な仕事内容例えばこんな場面
裁判部書記官のもとで各種の裁判事務訴訟関係書類の授受、法廷の準備、来庁者の対応
事務局(総務課)広報など裁判所の制度を伝える広報行事の企画
事務局(人事課)研修など職員の育成のための研修の企画
事務局(会計課)設備管理など裁判所の物的な設備を整える

公式サイトの職員紹介では、刑事部の事務官の仕事として「訴訟関係書類の授受や法廷の準備、来庁者の対応など」が紹介されています。

裁判員裁判の事件は準備が多く、部の中での連携が大切だとも書かれていました。

窓口での一言が大切な仕事

裁判所に来る人の多くは、手続に慣れていません。窓口では、こんなやりとりがよくあるはずです。

「この書類は、どこに出せばいいですか?」
「こちらの部の窓口でお預かりします。手続の扱いは担当の書記官に確認しますね」

一般職に求められる「的確な事務処理」は、こうした一つひとつの受け答えや書類の扱いの正確さのことなんです。

勤務地と異動のイメージ

一般職は、希望する勤務地を管轄する高等裁判所の区域内の裁判所で働きます。本人の希望状況などに応じて、最高裁判所で勤務することもあります。

異動はおおむね3年が目安で、採用された裁判所のある都道府県内の異動が一般的とされています。

仕事内容をもっと詳しく知りたい方は、事件の流れに沿って紹介している裁判所事務官の仕事内容も読んでみてください。

給与と働き方の目安

一般職の初任給は、令和8年4月1日現在・東京都特別区内勤務の例で、大卒程度区分が278,400円、高卒者区分が240,360円です。

このほか、期末・勤勉手当(1年間に俸給月額などの約4.65か月分)、通勤手当、住居手当、超過勤務手当などがあります。

項目令和8年度の受験案内の内容
勤務時間1日7時間45分
休日土日・祝日・年末年始
年次休暇年20日(4月1日採用の年は15日、20日を限度に繰越し)
特別休暇夏季休暇3日・結婚休暇5日など
育児休業子が3歳に達する日まで

金額や制度は年度によって変わることがあるので、最新の内容は裁判所の採用情報で確かめておきましょう。

大卒程度区分と高卒者区分を「受験資格・試験・初任給」で比べる

ここが大事なところです

同じ一般職でも、大卒程度区分と高卒者区分では、受けられる人・試験の中身・初任給・試験の時期が違います。まずは自分がどちらを受けられるかを確かめましょう。

一般職の2つの区分は、ひとまとめに語られがちです。ここでは、受験生が迷いやすい3つの点で横に並べてみました。

比べる点大卒程度区分高卒者区分
受験資格平成8年4月2日から平成17年4月1日生まれ(学歴不問)。平成17年4月2日以降生まれは大学・短大・高専の卒業(見込み)など令和8年4月1日に高校卒業後2年を経過していない人、令和9年3月までに卒業見込みの人など
第1次試験基礎能力試験(30題)と専門試験(30題)基礎能力試験(知能24題・知識21題)と作文試験
第2次試験論文試験(小論文)と人物試験(個別面接)人物試験(個別面接)
初任給278,400円240,360円
試験の時期春に申込み、5月に第1次試験夏に申込み、9月に第1次試験

受験資格・試験の内容・日程は令和8年度の受験案内、初任給は令和8年4月1日現在・東京都特別区内勤務の例です。

裁判所事務官一般職の大卒程度区分と高卒者区分を受験資格・試験・初任給で比べた図解

いちばん大きな違いは「専門試験」があるかどうか

大卒程度区分には、憲法・民法などの専門試験があります。高卒者区分には専門試験がなく、基礎能力試験と作文試験が中心です。

『法律を勉強したことがないけど大丈夫?』と心配になる方もいますよね。

公式のQ&Aでは、細かな専門知識の有無より、基本的な知識や理解を重視すると書かれています。法学部のほか、経済・文・教育・理学部など、さまざまな学部の出身者が活躍しているそうです。

大卒程度区分が向いている人
  • 大学・短大・高専を卒業(見込み)か、年齢の条件に当てはまる
  • 憲法・民法などの法律の勉強に取り組める
  • 小論文で自分の考えを書く練習ができる
高卒者区分が向いている人
  • 高校卒業後2年以内か、卒業見込み
  • 法律の専門科目より、基礎能力の対策に集中したい
  • 高校在学中から公務員を目指したい

年齢の条件は「学歴不問」の範囲がポイント

大卒程度区分は、公式のQ&Aでは、試験を行う年度の4月1日に21歳以上30歳未満なら、学歴に関係なく受けられるとされています。

つまり、高校を卒業して働いている人でも、年齢の条件に当てはまれば大卒程度区分を受けられます。

一般職(大卒程度区分)の試験の特徴

先に結論

令和8年度の大卒程度区分は、第1次試験で基礎能力試験と専門試験、第2次試験で論文試験と人物試験を行います。配点比率がいちばん大きいのは、人物試験(20分の8)です。

ここからは、受験者の多い大卒程度区分の試験を詳しく見ていきます。

試験種目中身時間配点比率
第1次基礎能力試験(多肢選択式)知能分野24題・知識分野6題の計30題2時間20分20分の5
第1次専門試験(多肢選択式)憲法10題・民法10題と、行政法・刑法・経済理論から1科目10題の計30題1時間30分20分の5
第2次論文試験(小論文)1題(第1次試験日に実施)1時間20分の2
第2次人物試験(個別面接)人柄・資質・能力などを見る20分の8

専門試験の選択科目は、試験当日に問題を見てから選べます。

合格者の決まり方

合格者は、希望勤務地の高等裁判所ごとに決まります。筆記試験は素点ではなく、偏差値と同じような考え方の「標準点」で比べられます。

人物試験以外の各種目には、下限の得点が決められています。1つでも下回ると、ほかの種目の点数にかかわらず不合格になるので、苦手科目を作りすぎないことが大切です。

人物試験はAからDの4段階で評価され、最終合格はAからCの人とされています。

令和7年度から専門試験が変わりました

令和7年度から、大卒程度区分の専門試験は憲法の記述式がなくなり、すべて多肢選択式になりました。出題数も憲法7題から10題、民法13題から10題に変わり、選択科目に行政法が加わっています。詳しくは専門記述(憲法)の変更点の記事をどうぞ。

科目ごとの対策は裁判所事務官の試験内容で紹介しています。

人物試験に向けて今からできること

人物試験は、専門知識を問うものではないと公式のQ&Aに書かれています。そのかわり、人柄や資質、能力を個別面接で見られます。

『面接って、何を準備すればいいの?』と迷う方も多いはずです。まずは次の点を自分の言葉で話せるようにしておくと、落ち着いて臨めます。

人物試験の前に言葉にしておくこと
  • なぜ裁判所事務官の一般職を選んだのか
  • 裁判部と事務局、それぞれでどんな仕事をしたいか
  • 書類を正確に扱った経験や、人に説明した経験
  • 希望する勤務地と、そこで働きたい理由

官庁訪問のような訪問は必要ないと、公式のQ&Aに書かれています。準備の時間は、仕事内容を調べることと話す練習に使いましょう。

令和8年度の日程

令和8年度 一般職(大卒程度区分)の日程
  1. 申込受付:3月13日から4月6日まで(インターネットのみ)
  2. 第1次試験:5月9日(論文試験も同じ日)
  3. 第1次試験の合格発表:5月28日
  4. 第2次試験(人物試験):6月8日から7月3日の間
  5. 最終合格発表:7月9日

日程は毎年変わるので、受ける年の受験案内で確認しておきましょう。

高卒者区分の試験

高卒者区分の試験は、令和8年度の受験案内では次のとおりです。

試験種目中身・時間配点比率
第1次基礎能力試験知能分野24題・知識分野21題、1時間40分20分の9
第1次作文試験50分20分の3
第2次人物試験(個別面接)20分の8

令和8年度の日程は、申込みが7月1日から7月10日、第1次試験が9月13日、最終合格発表が11月13日でした。

一般職の倍率と、最終合格から採用までの流れ

先に結論

一般職(大卒程度区分)の倍率は、令和8年度の全国合計で4.5倍でした。ここでいう倍率は、第1次試験の有効受験者数を最終合格者数で割った数です。

『倍率はどのくらいなんだろう』というのは、受ける前にいちばん気になるところですよね。公式の「試験の実施結果」から、大卒程度区分の全国合計を並べました。

年度申込者数第1次の有効受験者数最終合格者数倍率
令和4年度11,454人8,773人1,588人5.5倍
令和5年度11,469人8,575人2,351人3.6倍
令和6年度10,945人8,355人1,979人4.2倍
令和7年度10,739人8,911人2,135人4.2倍
令和8年度9,911人8,131人1,821人4.5倍

数字には、総合職の特例を希望した人も含まれています。

管轄区域ごとに見ると差があり、令和8年度は東京高裁の管轄区域が3.4倍、大阪高裁の管轄区域が8.3倍でした。高卒者区分は、令和7年度の倍率が9.1倍です。

最終合格から採用まで

最終合格者は、試験の種類ごと・高等裁判所の管轄区域ごとに、採用候補者名簿へ点数の高い順に載ります。名簿の有効期間は1年です。

その後、高等裁判所が希望勤務地や成績などを考えて、原則として第一希望の勤務地を管轄する裁判所に推薦します。推薦を受けた裁判所から採用の意向を確かめる連絡があり、採用内定へと進みます。

最終合格から採用候補者名簿、推薦、意向照会、採用内定までの流れの図解

採用は原則として翌年の4月1日です。希望勤務地や欠員の状況によっては、名簿の有効期間内に採用されない場合もあります。

よくある失敗

最終合格した時点で「採用が決まった」と思い込み、ほかの進路の連絡を先に断ってしまうケースがあります。採用内定までは、推薦や意向照会の段階があることを覚えておきましょう。

採用までの流れは裁判所事務官になるにはでもステップごとに紹介しています。

裁判所事務官の一般職を目指す人からのよくある相談

この章でやること

一般職を目指す人からよく寄せられる相談を3つ選んで、公式の情報をもとに答えていきます。

相談1:裁判部門と司法行政部門は、自分で選べますか?

一般職の仕事内容を知りたい、裁判の部門と司法行政の部門があると聞いたけれど自分で選べるのか、という相談です。

公式の受験案内では、採用されると各裁判所の「裁判部」や「事務局」に配置されると書かれています。どちらに配置されるかを受験の段階で選ぶしくみは、受験案内には書かれていません。

異動はおおむね3年が目安とされているので、長く働く中で両方を経験することもあります。『どちらの仕事でも頑張れる』と言えるよう、両方の仕事内容を知っておくと面接でも話しやすくなります。

相談2:高校卒業後、専門学校に進んでから高卒者区分を受けられますか?

高校を卒業したら公務員の専門学校に進み、そこから一般職の高卒者区分を目指したい、という相談です。

結論から言うと、受けられるかどうかは「いつ受けるか」で変わります。令和8年度の受験案内では、高卒者区分の受験資格は「令和8年4月1日において高校卒業後2年を経過していない者」などとされています。

進学する場合は、自分が受けたい年度に受験資格があるかを、その年の受験案内で確かめてみてください。

また、大卒程度区分は、年度の4月1日に21歳以上30歳未満なら学歴に関係なく受けられます。高卒者区分だけでなく、こちらも選択肢として持っておくと安心です。

相談3:憲法・民法・行政法をゼロから始めて間に合いますか?

法律の科目を一から始めるけれど、問題集を見ても中身が理解できず不安だ、という相談です。

『問題集を解いても、なぜその答えになるのかが分からない』というのは、法律を初めて学ぶ人によくある悩みです。そう感じるのは自然なことなので、焦らなくて大丈夫です。

法律科目は、まず条文や基本的な考え方をつかんでから問題に入ると、理解が進みやすくなります。専門試験は憲法10題・民法10題が必須なので、この2科目から始めるのが基本です。

独学でいくか、講座を使うか

一般職の試験は、独学で合格を目指す人もいれば、講座を使う人もいます。どちらが合うかは、今の自分の状況で考えてみてください。

講座を検討してもいいサイン
  • 憲法・民法をゼロから学ぶので、考え方から教わりたい
  • 論文試験(小論文)を書いても、良し悪しが自分で判断できない
  • 人物試験(個別面接)の練習相手がいない
  • 仕事や授業と両立するための学習スケジュールが組めない

特に人物試験は配点比率が20分の8と大きく、一人では練習しにくい試験です。苦手な部分だけ講座に頼る使い方もあります。

裁判所事務官ガイド

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よくある質問

裁判所事務官の一般職とは何ですか?

裁判所が独自に行う採用試験の1つで、的確な事務処理に係る能力を重視する区分です。令和8年度は大卒程度区分と高卒者区分が行われています。

裁判所事務官の一般職の仕事内容は総合職と違いますか?

どちらも裁判部か事務局に配置されます。公式には重視する能力と勤務地の傾向が違うと書かれており、一般職は希望勤務地を管轄する高裁の区域内で働きます。

一般職は法学部でないと不利ですか?

公式のQ&Aでは、細かな専門知識より基本的な知識や理解を重視すると書かれています。法学部以外の出身者も多く活躍しています。

一般職から書記官になれますか?

なれます。事務官として一定期間働いた後、裁判所書記官養成課程の入所試験に合格し、研修を受けると書記官になれます。

一般職の採用はいつですか?

原則として最終合格した翌年の4月1日です。希望勤務地や欠員の状況によっては、名簿の有効期間内に採用されない場合もあります。

まとめ

この記事の要点
  • 裁判所事務官の一般職は、的確な事務処理に係る能力を重視する区分
  • 大卒程度区分と高卒者区分があり、受験資格・試験・初任給・時期が違う
  • 仕事内容はどちらも裁判部か事務局での事務で、昇進の道は開かれている
  • 大卒程度区分は人物試験の配点比率が20分の8と大きい
  • 令和8年度の大卒程度区分の倍率は全国合計で4.5倍

自分がどちらの区分を受けられるかが分かったら、次は試験の中身を詳しく見ていきましょう。

裁判所事務官ガイド

裁判所事務官ガイド 編集部

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