当サイトの記事は編集部が裁判所の公式サイトなど公的機関の公開情報と読者の声を調べて独自に執筆しています。当サイトは裁判所の公式サイトではありません。
『司法試験の勉強をしているけど、裁判所事務官も受けてみようかな』と考えている方も多いですよね。逆に、裁判所事務官を目指す中で司法試験が気になってきた方もいるはずです。
結論から言うと、裁判所事務官の採用試験と司法試験は、目的もその後の道もまったく別の試験です。ただ、憲法・民法・刑法など、勉強する分野には重なるところがあります。
この記事を読めば、自分の目的に合わせて裁判所事務官と司法試験をどう考えればいいかが分かります。
裁判所事務官と司法試験はどう違う?
裁判所事務官の採用試験は、裁判所で働く職員を採用するための試験です。司法試験は、裁判官などの法曹になるための道の入り口で、合格後は司法修習に進むのが一般的です。
裁判所事務官の採用試験は、裁判所が人事院の国家公務員採用試験とは別に、独立して実施しています。合格して採用されると、国家公務員の特別職として裁判所で働きます。
一方、裁判官になるには、司法試験に合格して司法修習を受けるのが一般的な道です。司法修習は、司法研修所が担当しています。
| 比べる点 | 裁判所事務官の採用試験 | 司法試験 |
|---|---|---|
| 目的 | 裁判所の職員を採用する | 法曹になる道の入り口 |
| 合格のあと | 採用候補者名簿から推薦・意向照会を経て採用 | 司法修習に進むのが一般的 |
| 仕事 | 裁判部や事務局で裁判事務・司法行政事務 | 裁判官などとして事件を扱う |
| 実施 | 裁判所 | 裁判所事務官の採用試験とは別の試験 |
『司法試験に受かれば、裁判所事務官にもなれる?』と思う方もいるかもしれません。ただ、2つは別の試験なので、裁判所事務官として働くには裁判所の採用試験を受ける必要があります。
裁判官・書記官・事務官の関係
裁判所の裁判部には、裁判官のほか、裁判を支える職種として事務官・書記官・家庭裁判所調査官が置かれています。裁判官は事件を審理し、裁判をします。
裁判所書記官は、法律の専門家として固有の権限を持つ職種です。法廷への立会いや調書の作成などを担当し、書記官が立ち会わないと法廷を開けません。
裁判所事務官として一定期間在職すると、裁判所書記官養成課程の入所試験を受けられます。事務官から書記官への道は、裁判所事務官と書記官・裁判官の違い|事務官から書記官になるにはで詳しく解説しています。
裁判所事務官の働き方の基本
裁判所事務官として採用された場合の働き方も、公式に示されています。勤務時間は1日7時間45分で、休日は土日・祝日・年末年始です。
初任給は、一般職(大卒程度)で278,400円、総合職(大卒程度)で290,400円です。令和8年4月1日現在・東京都特別区内勤務の例なので、勤務地によって変わります。
裁判所事務官と司法試験、勉強はどこが重なる?
裁判所事務官の試験の専門科目には、憲法・民法・刑法など、司法試験の科目と重なる分野があります。ただ、試験の形式や求められる深さは同じではありません。
令和8年度の受験案内をもとに、裁判所事務官の試験で出る法律科目を並べてみます。
| 試験 | 法律に関わる種目 | 形式 |
|---|---|---|
| 一般職(大卒程度) | 必須: 憲法10題・民法10題、選択: 行政法・刑法・経済理論から1科目10題 | 多肢選択式 |
| 総合職(大卒程度) | 専門試験(多肢選択式)と、記述式の憲法1題・民法1題・刑法1題 | 多肢選択式と記述式 |
| 総合職(院卒者) | 大卒程度の記述式に、民事訴訟法または刑事訴訟法1題が加わる | 多肢選択式と記述式 |
一般職(大卒程度区分)の専門試験は、令和7年度から憲法の記述式がなくなり、すべて多肢選択式になりました。総合職には、これまでどおり記述式があります。
記述式の変更点については、裁判所事務官の専門記述(憲法)は今どうなった?変更点と対策でまとめています。
一般職と総合職で重なり方が違う
一般職(大卒程度区分)の専門試験は、すべて多肢選択式です。選択肢から正しいものを選ぶ形なので、条文や基本的な考え方を正確に覚えているかが問われます。
総合職は、第2次試験に憲法・民法・刑法の記述式があります。答案を書く練習をしてきた方には、なじみのある形式かもしれませんね。
公式Q&Aでは、試験は細かな専門知識の有無を問うものではなく、基本的な知識や理解を重視していると説明されています。深く掘り下げるより、基本を正確に押さえることを意識しておきましょう。

重なるからこそ気をつけたいこと
『司法試験の勉強をしていれば、裁判所事務官の試験は大丈夫?』と考える方もいますよね。ただ、裁判所事務官の試験には、法律科目以外の種目もあります。
一般職(大卒程度区分)の第1次試験には、知能分野24題・知識分野6題の基礎能力試験があります。さらに、論文試験(小論文)と、配点比率8/20の人物試験(個別面接)もあります。
法律科目の勉強だけで準備を終えてしまうことです。人物試験以外の各種目には下限の得点があり、1つでも下回ると不合格になります。基礎能力試験の対策も早めに始めておきましょう。
また、六法の持ち込みは全試験でできません(総合職の第2次の専門記述式では、会場で貸し出される六法だけ使えます)。試験の配点は裁判所事務官の試験内容|一般職試験の科目と配点をやさしく解説で確認してみてください。
法曹を目指す人のための目的別の選び方
裁判所事務官と司法試験のどちらを選ぶか、両方を受けるかは、最終的に何になりたいかで考えると分かりやすくなります。
ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。目的ごとに、どちらを軸にするとよいかを表にしてみました。
| 自分の目的 | 軸にする試験 | 考え方 |
|---|---|---|
| 裁判官として事件を扱いたい | 司法試験 | 司法試験合格と司法修習が一般的な道 |
| 裁判所で働いて裁判を支えたい | 裁判所事務官の採用試験 | 採用後に裁判部や事務局で働く |
| 法律の専門職として裁判所で働きたい | 裁判所事務官の採用試験 | 一定期間の在職後に書記官を目指せる |
| 裁判所の組織運営に関わりたい | 裁判所事務官(総合職) | 総合職は政策の企画立案に係る能力を重視 |
| まだ決めきれない | 両方の情報を集める | 日程と勉強の負担を見て判断する |

『法律を使う仕事がしたいけど、裁判官まで目指すかは迷っている』という方もいますよね。その場合は、裁判所で働きながら書記官を目指す道も、選択肢の一つとして考えてみてください。
総合職の採用者は、採用初年度に限り、書記官養成課程の入所試験の筆記試験が原則として院卒者区分は全部、大卒程度区分は一部免除されます。総合職については裁判所事務官の総合職とは?一般職との違いと特例制度で詳しく解説しています。
司法試験と裁判所事務官を併願する時の注意点
併願を考える時は、裁判所事務官の試験日程と、法律科目以外の対策の時間を先に確保しておくと進めやすくなります。
令和8年度の受験案内では、裁判所事務官の一般職(大卒程度区分)の第1次試験は5月9日(土)でした。人物試験は6月8日(月)から7月3日(金)、最終合格発表は7月9日(木)です。
日程は毎年変わるので、受験する年の受験案内で確認してみてください。司法試験の日程と重ならないかも、あわせて確かめておきましょう。
例えば「春は裁判所事務官の筆記に集中して、第1次試験のあとは面接の準備に切り替える」のように、時期ごとに重点を決めておくと迷いにくくなります。併願する場合は、どちらの勉強を優先する時期かを先に決めておくのがおすすめです。
- 裁判所事務官の試験日程を受験案内で確認した
- 基礎能力試験の対策の時間を確保した
- 小論文と面接の準備の時間を確保した
- 受験資格(年齢・学歴)を満たしているか確認した
- 合格したらどちらに進むか、考えておいた
独学でいくか、講座を使うか
法律科目の基礎がある方でも、裁判所事務官の試験には基礎能力試験や小論文、面接があります。どこまで独学で進めるかは、自分の状況で決めるのがおすすめです。
| こんな時は | 講座が役立つ場面 |
|---|---|
| 法律科目を初めて学ぶ | 憲法・民法の全体像を短い時間でつかむ |
| 小論文に自信がない | 書いた答案を添削してもらう |
| 面接の練習相手がいない | 面接練習で話す練習を重ねる |
| 司法試験の勉強と両立したい | スケジュール管理を手伝ってもらう |
講座の一例として、資格スクール大栄(運営は株式会社リンクアカデミー)には公務員講座があり、全国に教室があります。公式ページでは裁判所事務官専用のコースは確認できなかったので、教養・専門対策のコースで対応できるか、資料請求や説明会で確かめてみてください。
裁判所事務官ガイド
公務員試験の講座を資料請求で比べてみる
法律科目をゼロから学ぶ、論文を添削してもらう、面接の練習をする。独学で不安な部分だけでも講座を使うと準備が進めやすくなります。まずは資料請求で、コースの内容と受講スタイルを確かめてみましょう。
無料資格スクール大栄の公務員講座を見る講座の内容・料金は公式サイトで最新情報を確認してください。
裁判所事務官と司法試験についてよくある相談
知恵袋で見かけた相談のうち、この記事のテーマに近いものを3つ選んでお答えします。
相談1 事務官や書記官になれば、司法試験なしで弁護士になれる?
『裁判所事務官や書記官になれば、司法試験を受けずに弁護士資格が取れるの?』という相談です。
裁判所の公式の採用情報で案内されているのは、事務官から書記官になる道です。事務官や書記官の経験で弁護士資格が得られるという案内は、この記事で確認した公式情報にはありません。
裁判官になるには、司法試験合格と司法修習が一般的な道です。法曹を目指すなら、司法試験を軸に考えておくのが自然です。
相談2 司法試験と裁判所事務官の総合職、どちらが難しい?
『司法試験と裁判所事務官の総合職試験では、どちらが難しいの?』という相談もあります。
2つの試験は目的も形式も違うので、難しさを単純に比べることはできません。参考として、令和8年度の総合職(大卒程度区分)は、申込者数523人に対して最終合格者は8人、倍率は46.4倍でした。
倍率は「第1次試験の有効受験者数÷最終合格者数」で計算された数字です。難しさを比べるより、自分の目的に合う試験を選ぶことのほうが大事なんです。
相談3 事務官として経験を積めば、試験なしで裁判官になれる?
『裁判所事務官として長く働けば、司法試験に受からなくても裁判官になれることがあるの?』という相談です。
裁判所の公式の採用情報で案内されているのは、事務官から書記官への道です。裁判官になるには、司法試験合格と司法修習が一般的な道とされています。
裁判官を目指す気持ちが強い方は、司法試験を軸に計画を立ててみてください。裁判所で働きながら裁判を支えたい方は、事務官から書記官を目指す道を考えるとよいです。
よくある質問
裁判所事務官の試験と司法試験は同じ試験ですか?
別の試験です。裁判所事務官の採用試験は裁判所の職員を採用する試験で、司法試験は裁判官などの法曹になる道の入り口です。
司法試験の勉強は裁判所事務官の試験に役立ちますか?
憲法・民法・刑法など、重なる分野はあります。ただ、裁判所事務官の試験には基礎能力試験や小論文、人物試験もあるので、それぞれの対策が必要です。
裁判所事務官から裁判官になれますか?
裁判官になるには、司法試験合格と司法修習が一般的な道です。裁判所事務官の採用試験とは別の試験になります。
裁判所事務官から書記官にはなれますか?
一定期間在職すると、裁判所書記官養成課程の入所試験を受けられます。合格して所定の研修を受けると書記官になれます。
裁判所事務官の総合職と一般職は両方受けられますか?
総合職には特例制度があります。申込み時に特例を希望して総合職の各試験種目を有効に受験すると、一般職(大卒程度区分)の受験者としても合否判定を受けられます。
まとめ
- 裁判所事務官の採用試験と司法試験は、目的もその後の道も別の試験
- 憲法・民法・刑法など、勉強の分野には重なるところがある
- 裁判所事務官の試験には基礎能力試験・小論文・人物試験もある
- 何になりたいかで、軸にする試験を決める
- 事務官から書記官を目指す道もある
法律を使う仕事にはいろいろな道があります。自分の目的に合わせて、無理のない計画を立ててみてください。





コメント