裁判所事務官の総合職とは?一般職との違いと特例制度

裁判所事務官の総合職と一般職の違いを解説する記事のアイキャッチ

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『裁判所事務官の総合職って、一般職と何が違うんだろう?』『特例制度を使うと何が得なの?』と気になっている方も多いですよね。説明を読んでも、言葉が難しくてイメージしにくいところです。

結論から言うと、裁判所事務官の総合職は「政策の企画立案に係る高い能力」を重視する区分で、特例制度を使えば一般職(大卒程度区分)としても合否判定を受けられます。

この記事を読めば、総合職と一般職の違いと、特例制度を使った時のチャンスの増え方が分かり、どちらを目指すか決めやすくなります。

目次

裁判所事務官の総合職とは?

先に結論

裁判所事務官の総合職試験には、院卒者区分と大卒程度区分があります。政策の企画立案に係る高い能力を重視する試験で、第3次試験まである点が一般職との大きな違いです。

裁判所事務官の採用試験は、人事院の国家公務員試験とは別に、裁判所が独自に行っています。総合職は、その中で将来の裁判所の運営を担う人を採用する区分と考えるとイメージしやすいです。

令和8年度の受験案内では、総合職の2つの区分は次のように分かれています。

区分受験できる人(令和8年度)
院卒者区分平成8年4月2日以降生まれで、大学院の修士課程・専門職大学院を修了(見込み)など
大卒程度区分平成8年4月2日から平成17年4月1日生まれ(学歴不問)。平成17年4月2日以降生まれは大学卒業(見込み)など

大卒程度区分は、公式のQ&Aでは、年度の4月1日に21歳以上30歳未満なら学歴に関係なく受けられるとされています。

『総合職は法学部じゃないと無理なのでは?』と思う方もいますよね。公式のQ&Aでは、細かな専門知識の有無より基本的な知識や理解を重視すると書かれており、さまざまな学部の出身者が活躍しています。

院卒者区分と大卒程度区分はどこが違う?

同じ総合職でも、2つの区分にはいくつか違いがあります。

比べる点院卒者区分大卒程度区分
記述式の専門試験憲法・民法・刑法に、民事訴訟法か刑事訴訟法1題が加わる憲法・民法・刑法
書記官養成課程の入所試験(採用初年度)筆記試験が全部免除(原則)筆記試験が一部免除(原則)
令和8年度の倍率13.0倍46.4倍

大学院で法律を学んでいる方は、院卒者区分も選択肢に入れてみてください。

採用されると国家公務員の特別職

総合職で採用されても、身分は一般職と同じ国家公務員の特別職です。給与は、試験の種類に応じて人事院の試験で採用された人と同様とされています。

初任給は、令和8年4月1日現在・東京都特別区内勤務の例で、院卒者区分が306,720円、大卒程度区分が290,400円です。

このほか、期末・勤勉手当(1年間に俸給月額などの約4.65か月分)、通勤手当、住居手当、超過勤務手当などがあります。

勤務時間は1日7時間45分で、休日は土日・祝日・年末年始です。この点は総合職も一般職も変わりません。

総合職と一般職の違いを比べてみよう

ここが大事なところです

総合職と一般職の違いは、重視する能力、試験の段階、勤務地の傾向、書記官への道の4つで見ると分かりやすくなります。ただ、どちらで採用されても、能力と勤務成績次第で昇進の道は大きく開かれています。

裁判所事務官の総合職と一般職は、同じ「事務官」でも期待される役割が少し違います。ここでは、受験生が気になる点を横に並べてみました。

比べる点総合職(大卒程度区分)一般職(大卒程度区分)
重視する能力政策の企画立案に係る高い能力的確な事務処理に係る能力
試験の段階第1次から第3次まで第1次と第2次
記述式の専門試験あり(憲法・民法・刑法)なし(すべて多肢選択式)
勤務地の傾向所属高裁の所在地での勤務が中心。多くの人が最高裁判所も経験希望勤務地を管轄する高裁の区域内。希望状況などで最高裁勤務も
初任給(令和8年4月1日現在・東京都特別区内勤務の例)290,400円278,400円

総合職も一般職も、希望する勤務地を管轄する高等裁判所の区域内の裁判所で働く点は同じです。

違いは、総合職が所属する高裁の所在地での勤務が中心になること、そして多くの総合職が最高裁判所での勤務も経験することです。最高裁で働く事務官については最高裁判所の事務官で紹介しています。

書記官への道での違い

裁判所事務官として一定期間在職すると、裁判所書記官養成課程の入所試験を受けられます。

総合職で採用された人は、採用初年度に限り、この入所試験の筆記試験が原則として免除されます。院卒者区分は全部、大卒程度区分は一部の免除です。

書記官の仕事や、事務官から書記官になるまでの流れは裁判所事務官と書記官・裁判官の違いで詳しく紹介しています。

総合職が向いている人
  • 裁判所の運営や制度づくりに関わりたい
  • 記述式の答案や政策論文にじっくり取り組める
  • 高裁の所在地や最高裁での勤務に前向き
一般職が向いている人
  • 窓口や書類の仕事で裁判を支えたい
  • 多肢選択式の試験に集中して対策したい
  • 地元の都道府県で長く働きたい

迷った時に自分に聞いてみたいこと

総合職と一般職のどちらを目指すか迷ったら、次の問いに答えてみてください。答えが「はい」に寄るほど、総合職を検討する価値があります。

総合職を目指すか考えるための問い
  • 裁判所の運営の企画や制度に関わる仕事に興味がある
  • 記述式の答案を書く勉強に時間をかけられる
  • 高裁の所在地や最高裁判所での勤務も前向きに考えられる
  • 採用人数が少なくても挑戦したい
  • 特例制度で一般職の判定も受けておきたい

「いいえ」が多くても、心配はいりません。一般職でも昇進の道は開かれていて、最高裁で働くこともあります。

一般職の仕事や試験は裁判所事務官の一般職とはで詳しく見られます。

総合職の試験の中身と日程

先に結論

令和8年度の総合職(大卒程度区分)は、第1次で基礎能力試験と専門試験(多肢選択式)、第2次で専門試験(記述式)・政策論文・人物試験、第3次で集団討論と個別面接を行います。

総合職の試験は、一般職よりも段階が多いのが特徴です。令和8年度の受験案内をもとに、大卒程度区分の試験を見ていきましょう。

試験種目中身配点比率
第1次基礎能力試験(多肢選択式)15分の2
第1次専門試験(多肢選択式)15分の2
第2次専門試験(記述式)憲法1題(1時間)、民法1題・刑法1題(2時間)15分の4
第2次政策論文試験1時間30分15分の1
第2次人物試験個別面接
第3次人物試験集団討論・個別面接15分の6

院卒者区分では、記述式の専門試験に民事訴訟法か刑事訴訟法の1題が加わります。

記述式で使える六法は会場の貸与分だけ

六法の持ち込みは、全試験で認められていません。総合職の第2次の専門試験(記述式)では、会場で貸し出される六法だけを使えます。

『条文を全部覚えないといけないの?』と不安になるかもしれません。ただ、記述式では会場の六法を使えるので、条文を探して使いこなす練習をしておくことが大切です。

令和8年度の日程

令和8年度 総合職(院卒者区分・大卒程度区分)の日程
  1. 申込受付:3月13日から4月6日まで(インターネットのみ)
  2. 第1次試験:5月9日
  3. 第1次試験の合格発表:5月28日
  4. 第2次試験(筆記):6月6日
  5. 第2次試験(人物):6月8日から6月19日の間
  6. 第2次試験の合格発表:7月2日
  7. 第3次試験:7月13日から14日(東京都)
  8. 最終合格発表:7月29日

第3次試験は東京都で行われます。遠方から受ける方は、移動や宿泊の準備も早めに考えておきましょう。

日程は毎年変わるので、受ける年の受験案内で確かめてください。試験全体の見取り図は裁判所事務官試験とはでまとめています。

一般職の日程と並べるとこうなる

特例制度を使う人や、一般職と迷っている人は、2つの日程を並べて見ておくと安心です。令和8年度の受験案内では次のとおりでした。

日程総合職(大卒程度区分)一般職(大卒程度区分)
申込受付3月13日から4月6日同じ
第1次試験5月9日5月9日(論文試験も同じ日)
第1次の合格発表5月28日5月28日
第2次(人物)6月8日から6月19日6月8日から7月3日
最終合格発表7月29日7月9日

一般職の最終合格発表のほうが、総合職より先に出ます。『一般職の結果が先に分かるなら、その後どう動けばいいの?』と迷った時は、受験案内や裁判所の採用担当の案内をよく確かめてみてください。

申込み後は変更できません

申込みを終えると、試験の種類や特例希望の有無、希望する高裁、試験地は変更できません。総合職にするか一般職にするか、特例を希望するかは、申込みの前に決めておきましょう。

特例制度を使うと、チャンスは何回ある?

先に結論

総合職の申込み時に特例を希望し、総合職の各試験種目を有効に受験すると、一般職(大卒程度区分)の受験者としても合否判定を受けられます。1回の申込みで、総合職と一般職の2つの判定を受けられるしくみです。

ここが、総合職を受ける人にとっていちばん大事なところです。特例制度の流れを、受験する人の目線で順番に見ていきましょう。

特例制度を使った時の流れ
  1. 総合職に申し込む時に、特例を希望する
  2. 総合職の各試験種目を有効に受験する
  3. 一般職用の論文試験(小論文)1題も受ける
  4. 総合職としての合否判定を受ける
  5. あわせて、一般職(大卒程度区分)の受験者としても合否判定を受ける
総合職に特例を希望して申し込むと総合職と一般職の2つの合否判定を受けられる流れの図解

つまり、特例を希望しておけば、総合職の判定に加えて一般職としての判定も受けられます。

『総合職だけで勝負するより、チャンスが増えるということ?』と思った方、その理解で大丈夫です。

受験仲間とのあいだでも、こんな会話になりがちです。

「特例って、希望しておいたほうがいいのかな?」
「一般職の道も残したいなら、申込みの時に希望しておくと安心だよ。あとからは変えられないからね」

特例を希望しても不利にはならない

公式の受験案内では、特例希望の有無は合否に影響せず、採用の時や採用後に不利になることもないと書かれています。

気になる点公式の受験案内に書かれていること
特例を希望すると総合職の合否に影響する?影響しない
一般職として採用された時に不利になる?採用時・採用後とも不利にならない
試験で増えるものは?一般職用の論文試験(小論文)1題
申込み後に希望を変えられる?変更できない

特例を使う時に気をつけたいこと

特例制度で増えるのは、一般職用の小論文1題です。総合職の政策論文とは別に、小論文の準備も必要になります。

また、申込み後は特例希望の有無を変えられません。「やっぱり特例を希望したかった」とならないよう、申込みの画面で選んだ内容をよく確かめておきましょう。

申込み前に確かめたいこと
  • 総合職と一般職、どちらを第一に目指すか決めた
  • 特例を希望するかどうかを決めた
  • 一般職用の小論文の対策時間を確保できる
  • 希望する高裁と試験地を決めた
  • 家庭裁判所調査官補とは併願できないことを確認した

結果のパターンを先に知っておこう

特例を希望した時に起こりうる結果を、パターンで見ておきましょう。最終合格者は、試験の種類ごと・高裁の管轄区域ごとに採用候補者名簿へ載ります。

パターンどうなるか
総合職として最終合格総合職の採用候補者名簿に載る
総合職は不合格、一般職として合格一般職(大卒程度区分)の採用候補者名簿に載る
特例を希望していない総合職としての合否判定だけを受ける

特例を希望していなければ、一般職としての判定は受けられません。一般職の道も残したい方は、申込みの時に特例の希望を忘れないようにしましょう。

総合職の倍率と採用予定人員

先に結論

令和8年度の総合職(大卒程度区分)は、申込者数523人に対して最終合格者数8人で、倍率は46.4倍でした。採用予定人員も各高裁で数人程度と少なめです。

総合職は、採用される人数がとても少ない区分です。令和8年度の実施結果を見てみましょう。ここでいう倍率は、第1次試験の有効受験者数を最終合格者数で割った数です。

区分(令和8年度)申込者数最終合格者数倍率
総合職(院卒者区分)61人3人13.0倍
総合職(大卒程度区分)523人8人46.4倍
一般職(大卒程度区分)の全国合計9,911人1,821人4.5倍

採用予定人員(令和8年1月現在)は、総合職の院卒者区分が5人程度です。大卒程度区分は札幌1人・仙台1人・東京6人・名古屋2人・大阪4人・広島2人・高松1人・福岡3人程度とされています。

『そんなに少ないなら、受けても意味がないかな』と感じる方もいるかもしれません。

ただ、特例制度を使えば、一般職としての判定も同時に受けられます。総合職に挑戦しながら一般職の道も残せるのは、この制度ならではの強みなんです。

総合職と一般職の倍率と採用予定人員を比べた図解

裁判所事務官の総合職を目指す人からのよくある相談

この章でやること

総合職を目指す人からよく寄せられる相談を3つ選んで、公式の情報をもとに答えていきます。

相談1:特例ありにすると、総合職に落ちた時に一般職で受かりにくくなりますか?

総合職を受けるつもりだけれど、特例を希望すると一般職の判定で不利になるのでは、と心配している相談です。

結論から言うと、公式の受験案内では、特例希望の有無は合否に影響しないと書かれています。採用の時や採用後に不利になることもないとされています。

特例を希望した人は、総合職の各試験種目を有効に受験すれば、一般職(大卒程度区分)の受験者としても合否判定を受けられます。

相談2:特例制度のデメリットはありますか?

特例制度に何か落とし穴がないか知りたい、という相談です。

公式の受験案内から読み取れる注意点は、主に2つです。1つは、一般職用の論文試験(小論文)1題が追加されることです。

もう1つは、申込み後に特例希望の有無を変えられないことです。合否や採用での不利はないので、小論文の準備ができるかどうかで考えてみてください。

相談3:総合職は、書記官試験が少し免除されるだけなのに目指す意味はありますか?

総合職のメリットが書記官の入所試験の免除くらいなら、一般職でいいのでは、という相談です。

確かに、総合職で採用された人は、採用初年度に限り入所試験の筆記試験が原則として免除(大卒程度区分は一部)されます。

ただ、違いはそれだけではありません。総合職は政策の企画立案に係る高い能力を重視する区分で、多くの人が最高裁判所での勤務も経験します。

一方で、公式には採用試験の種類にかかわらず昇進の道は大きく開かれているとも書かれています。「どちらが上か」より、「どんな働き方をしたいか」で選ぶのがおすすめです。

例えば、「裁判所の制度づくりや運営の企画に関わりたい」なら総合職、「地元の裁判所で窓口や書類の仕事を通して裁判を支えたい」なら一般職、という考え方もできます。迷う場合は、特例制度で両方の判定を受ける道もあります。

独学でいくか、講座を使うか

総合職は、記述式の専門試験や政策論文、集団討論など、一人で対策しにくい種目が多い試験です。

種目一人で対策しにくい理由講座が役立つ場面
専門試験(記述式)答案の良し悪しを自分で判断しにくい答案の添削
政策論文・小論文書き方の型が身につきにくい書き方の講義と添削
集団討論・個別面接練習相手がいない面接や討論の練習
憲法・民法・刑法初学だと全体像がつかみにくい初学者向けの講義

すべてを講座に頼らなくても、苦手な種目だけ講座を使う、という選び方もあります。

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よくある質問

裁判所事務官の総合職とは何ですか?

裁判所が独自に行う採用試験の1つで、政策の企画立案に係る高い能力を重視する区分です。院卒者区分と大卒程度区分があり、第3次試験まで行われます。

裁判所事務官の総合職と一般職は併願できますか?

総合職の申込み時に特例を希望すると、総合職の各試験種目を有効に受験することで、一般職(大卒程度区分)の受験者としても合否判定を受けられます。

特例を希望すると何が増えますか?

一般職用の論文試験(小論文)1題が追加されます。特例希望の有無は合否に影響せず、採用時・採用後にも不利にならないとされています。

総合職は一般職より偉いのですか?

公式には、採用試験の種類にかかわらず、能力と勤務成績次第で昇進の道が大きく開かれていると書かれています。重視する能力と勤務地の傾向が違う、と考えるのがおすすめです。

総合職と家庭裁判所調査官補は併願できますか?

令和8年度の受験案内では、裁判所事務官の採用試験は家庭裁判所調査官補と併願できないとされています。

まとめ

この記事の要点
  • 裁判所事務官の総合職は、政策の企画立案に係る高い能力を重視する区分
  • 一般職との違いは、試験の段階・記述式の有無・勤務地の傾向・書記官への道
  • 特例を希望すると、一般職(大卒程度区分)としても合否判定を受けられる
  • 特例希望の有無は合否に影響せず、増えるのは一般職用の小論文1題
  • 令和8年度の大卒程度区分の倍率は46.4倍で、採用予定人員は少なめ

総合職に挑戦するか迷っている方は、特例制度で一般職の道も残せることを思い出してみてください。

裁判所事務官ガイド

裁判所事務官ガイド 編集部

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